上達のための将棋の本
ここでは初段を目指す人のための将棋の本と使い方を紹介します。将棋の本には本格的な戦術書から詰将棋、初心者向けガイド、観戦ガイド等たくさんの種類があります。 別の記事でも触れましたが、環境が整っている人や将棋のセンスのある人はあまり本で勉強しなくても上達することが可能です。 実際、実戦だけで有段者に到達する人もいます。しかし、環境がない人や1人で勉強するような場合、詰まる可能性が高くなります。そのためには本でそこを補うのは有効な方法です。 また、適切な時期に適切な本で学ぶことで棋力の向上を早めたり、壁にぶつかっての停滞を防ぐことが可能になります。 逆に自分のレベルや時期にあっていない本で勉強するとなかなか上達が見込めなかったりします。 これは多くの初段への到達が難しい人が陥っている問題点だと思います。 また目的を持って読まないと自分のものにできずに逆に筋が悪くなってしまったり、勉強しているのに全然成長しないと言った危険性もあります。 そういう意味では高校受験や大学受験の参考書選びに似ている部分があるかもしれません。 自分の実力にあった時期に素晴らしい参考書にであうことで一気に学力を向上できる点や使い方に注意する点なんかも似ている部分があるでしょう。 近年では受験界では参考書ルートといったものがあり、志望校への合格するための力をつける方法が注目を集めています。 今回この参考書ルートのような形で将棋の有段者へのステップを紹介したいと思います。
初心者から初級者へ
この段階ではルールを覚えた後にどうやって将棋を進めていけば勝ちに近づいていくのかといったことやその具体的なトレーニングを行います。 戦法書を読む前にまずはこの基本を学んでおくと結果的に上達が早くなります。 羽生善治のみるみる強くなる将棋 序盤の指し方 入門 (池田書店 羽生善治の将棋シリーズ) この羽生のみるみる強くなるはシリーズがあり、どれも非常にわかりやすいです。 その中でも最初に学ぶべき部分が書かれているのがこの序盤の指し方です。 何度か読んで将棋とはどのように進めていけばいいのか全体像を掴むのが目的です。 1手詰将棋 将棋パワーアップシリーズ みるみる強くなるシリーズで将棋の考え方を学んだら次には具体的な知識を得ていきましょう。そこでおすすめなのがこの1手詰将棋です。 初心者の場合、まず詰みの形に慣れるためには反復練習が重要です。この1手詰将棋はそのための問題集です。早い人であれば2,3日、遅くても2週間程度で一通り終わるでしょう。 何度かやってみてほとんどひと目で解けるようになったら次の3手詰にすすみます。
初級者から中級者へ
羽生のみるみるシリーズと1手詰将棋をある程度マスターしたらもう初級者と言っていいレベルです。次は中級者への道を紹介します。 このあたりから将棋の全体像と超基本はできていると思うので、戦法書も並行してやると良いでしょう。戦法書は自分の好きな戦法を選ぶのが一番ですが、 必ず初心者向けの物を選ぶのが大事です。 全体的に創元社のものはその目的にあったものが多い気がします。また、マイナビならば基本を重要視したシリーズを選びましょう。 将棋には主に玉を直接攻める縦の将棋と玉を間接的に攻める横の将棋という大きな分類があります。 縦の将棋は矢倉や角換わり、相振り飛車といったもので、横の将棋は対抗形です。 この縦と横の将棋に関して各1つは得意な戦法を持ちましょう。感覚がだいぶ違うのでこの2つの用意をするのが重要です。 例を出すと居飛車メインなら棒銀と対振り飛車右四間飛車。振り飛車党なら四間飛車と相振り三間飛車といった感じです。 このように縦と横の将棋に得意戦法をもちつつ、次の本でその他のテクニックを身につけると中級者といえるでしょう。 将棋・ひと目の手筋 この本は次の1手形式の問題集で、最初に大きく将棋の楽しみが増えるテクニックが満載の本です。いわゆる、ゲームで言う技にあたるものが習得できます。 個人的には全部の将棋の本の中でもっともおすすめできる本の一つなっています。一部難しい問題もありますが、どれも重要な手筋なので8割位正解できるようになるのを目指しましょう。 この本の問題をある程度できるようになると将棋が格段に楽しくなると思います。 3手詰将棋 将棋パワーアップシリーズ この段階でひと目の手筋と同様に手を着けると良いのが、3手の詰将棋です。 1手詰に比べて、3手は格段に難しくなります。しかし、3手詰はいわゆる詰みの形や手筋で最も重要なものが学べます。 この本も繰り返しやってほとんどひと目で正解がわかるところまでいきましょう。有名な3手詰ハンドブックもオススメです。 この本も簡単と感じるようになるまで繰り返すのが良いでしょう。この3手の読みは今後の上達の基礎となるのでしっかりとやると後の効果が高くなると思います。
中級者から上級者へ
自分の得意戦法をもち、ひと目の手筋と3手詰がある程度できるようになったら中級者といっていいでしょう。 この段階では縦の将棋と横の将棋でもう一つか2つわかる戦法をもつのが目標になります。 そのときに大事なのはよく遭遇するものを中心に対策していきましょう。 例えば矢倉はある程度わかるけれど角を交換する角換わりになるとどうするのかわかりにくい 四間飛車への対策はわかるけれど中飛車への対策はわからないということがなくなるようにするということです。 縦と横の将棋でそれぞれ2,3の形をもつと苦手な形に遭遇する確率がかなり下がってきます。 この戦法を増やすのに加えて以下の本で全体的な力を底上げします。 将棋・ひと目の寄せ 将棋の終盤に必要になる考え方やテクニックの基礎が学べる次の一手形式の問題集です。 将棋の寄せは感覚が異なりますが、それらはすでに羽生善治のみるみるシリーズで学んでいるはずなので理解はできていると思います。 しかし、具体的なテクニックや練習をして初めて使えるようになるのも事実です。この問題集はその能力を身につけるのが目的となります。 佐藤康光の寄せの急所 囲いの急所 (NHK将棋シリーズ) この本では囲いの崩し方を学びます。ひと目の手筋をある程度マスターした後にやるとよいのがこの本です。ひと目の寄せと同時期にやるのがいいと思います。 穴熊、矢倉、美濃といった基本的な囲いの攻略法と実戦での運用の仕方が紹介されています。 最強の終盤 詰みと寄せの最重要手筋104 (マイナビ将棋BOOKS) あまり知られていない名著です。アマチュア特に級位者の間では特に終盤で将棋の勝敗が動くことが多いですが、この本は終盤力の強化に役立ちます。 基本からやや高度な問題も有り中級者が上級者へとステップアップするのに橋渡しになるような棋書だと思います。
上級者から有段者へ
ここまで来ると有段者はかなり近いです。この段階ではよく遭遇する苦手の対策を講じる他に有段者必須の知識を身につけましょう。 また、遭遇率の高い奇襲戦法も基本的な対策を理解するといいです。ここまでくれば奇襲戦法の対策もそれまでの積み重ねの応用で早く習得できるでしょう。 寄せが見える本 〈基礎編〉 (最強将棋レクチャーブックス (1)) この本は寄せの基本について丁寧に解説しています。特に重要な点は口をすっぱくして寄せの大事な点を繰り返している点でしょう。 この考え方を実践できるようになると終盤力が大幅に上昇し、逆転負けもしにくくなります。 この本を読んだあと、ひと目の寄せにもどるとまた発見があるはずなのでその使い方もおすすめです。 この本では玉を包囲する寄せを体にしみこませるのが目的になります。終盤安易に王手をしなくなればある程度身についたと言えると思います。 5手詰将棋:テーマは「実戦!」 将棋パワーアップシリーズ 5手の詰将棋の問題集です。たくさんある詰将棋の中ではもっとも実戦的なものがこのシリーズだと思います。 詰将棋の芸術性より将棋の上達の狙いを秘めた本なので上達という点ではこの本が5手の詰将棋ではもっとも良いと思います。 ただし、芸術性は弱いのでそういうのに興味のある人は脳トレ5手詰なんかで芸術性のあるものに触れるのがいいと思います。 割と簡単にこの問題集がクリアできると詰ます能力に関しては有段者が近いでしょう。 寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス) この本は将棋を指す人であれば名著として最も名前を挙げる人が多い本かもしれません。この前のバージョンは絶版となっており、プレミアがついていたほどです。 基本問題は特に重要なので有段者を目指す方は基本問題だけでも繰り返しやりましょう。 応用問題に関しては有段者のレベルなのでまずは基本を確実に正解できるようにしましょう。 この本の応用問題は基本から派生しているので基本を学べば学ぶほど解きやすくなっています。