意図的練習に続いて紹介するのはマージナルゲインという考え方です。
これは意図的練習の考え方に近いのですが、より詳細に行っていくという点ではその部分的発展形といえるかもしれません。
マージナルゲインとは
マージナルゲインとは自転車競技ツール・ド・フランスでイギリスチームを初めての総合優勝へ導いた英国人ブレイルスフォード氏が提唱した考え方です。
この出来事は英国スポーツ史上最高の栄誉の一つとされ注目を集め、マージナル・ゲインの考え方はスポーツやビジネス、組織論などに広まっていきました。このサイトでは将棋の上達法を研究する目的で紹介していますが、マージナルゲインの考え方は多くの分野で応用できるので、将棋上達法ではなく、マージナルゲインについて検索してここを訪問した方は参考文献に挙げているマシュー・サイド氏の失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織という本を読んでみると理解が深まると思います。病院の医療ミスはなかなかなくならないのに航空機事故は激減しているのはなぜか?といった非常に興味深い例が紹介されていますので、他のスポーツ分野やビジネスといった場面で効果を上げられるのではないかと思います。
さて、少し話がそれてしまいましたが、マージナルゲインの手法は小さな改善を積み重ねていくこと。これが最大のポイントです。
そのためには、まずは物事の要素を細かくしていきます。そしてこの小さなことをわずかでもいいので改善していくのです。この際、改善する必要があるので必ず計測し、その効果を確認しながらしていき、最終的にこれらの積み重ねで全体の改善を目指すというものです。
簡単に言ってしまえば最初から大きな問題にとりくむのではなくて、小さな改善を繰り返して結果的に効果を上げるという考え方です。この考え方は他の名将にも見ることができます。
名将 ビル・ウォルシュ
ビル・ウォルシュはアメリカンフットボールの名将で2勝14敗で最下位だったサンフランシスコ・フォーティーナイナーズを率いてその3年後には優勝し、その後も素晴らしい成績を残して殿堂入りした人物です。
彼の最悪だったチームを復活させた方法も小さな改善に似たような方法でした。控室を清潔する。ポジションごとに必要なプレーの訓練、喫煙の禁止といった小さな基準を守ることを重要なものとしました。そうして、この小さな基準を改善して、チームを強化しました。
将棋と小さな改善
では将棋の場合はどうでしょうか?
将棋の場合はマラソンのような競技と違ってはっきりと数字を計測をすることができません。
しかし、それらに近いことができます。将棋の場合、1手1手独立しているので明らかな悪手を指したポイントの特定がしやすいです。この悪手を減らして全体の将棋を改善するといった方向性になるでしょう。この改善すべきポイントは近年、強くなったコンピュータソフトを使ってみるとわかりやすいと思います。また、強い人との感想戦で重要なポイントを指摘してもらう場合でも似たような効果があるでしょう。
ただむやみに将棋を指すのではなく、改善ポイントを意識していくと上達が見込めます。