藤井聡太と将棋AIどっちが強いのか?

藤井聡太vsAI強いのは?

2016年史上最年少のプロ棋士となった藤井聡太さんの衝撃的なデビューから数年が経過しました。その間には多くの史上最年少の記録を塗り替えてきました。
そして、藤井聡太さんの勢いはすさまじく8つのタイトルのうち7つを獲得した七冠となっています。


今回はそんな史上最年少棋士で数々の記録を打ち立てた藤井聡太さんと将棋AIどちらが強いのかといったことについて紹介したいと思います。

ちなみに将棋AIとは将棋を指すコンピュータのことで、一般的には将棋ソフトとも呼ばれています。
将棋愛好家でない人にはAI、愛好家にはソフトと呼ばれることが多いです。
それでは、まずは将棋AIが注目された点を簡単に説明して、結論を書きたいと思います。

将棋AIがなぜ注目されたのか?

近年のAIの進歩は目を見張るものがあり、様々な分野でAIが人類の未来を大きく変えると非常に注目を集めています。
その理由は技術的ブレイクスルーが起きたことですが、これは将棋のAIにも当然影響を与えました。

2010年頃、将棋のAIがトッププロを超えるというのはそれからあ20年以上はかかると思われていました。
しかし、急激に強くなった将棋AIはわずか数年後にプロに匹敵する実力を身につけました。
こうして、ついに将棋AIが人間を超えたのか?といったのが注目の的となったのです。
人間を超えるのが難しいと思われていたAIが人間を超えることができれば、別の分野でも様々なことに利用できるはずです。
こうしたことから産業界やその他の研究者からも将棋AIは関心を集めていたのです。

実際、その注目の高さから、将棋のプロと将棋AIが戦う電王戦が行われ世間の注目を集めました。

藤井聡太さんとAIどちらが強いのか?

この答えは簡単です将棋AIの方が遥かに強いです。
どのくらいの差があるかといえば1000回やっても1回勝つのも難しいといったレベルです。

既に将棋AIは人間の遥か上の力があり、人間のトップが1000回やっても1度も勝てないくらいの別次元に到達しています。
2023年現在の将棋ソフトは当然として藤井さんがデビューした数年前の将棋AI相手でも1000回やっても1度も勝てないでしょう。

将棋の対局中には確かに部分的に人間がAIを超える場合があるように見えます。
ときどき、AIの上をいく手を指したと聞く場合はその一部を指しています。
しかし、トータルでみると人間が相手にならないくらい強くなっているのが現在の将棋AIなのです。
そんな将棋AIは多くの変化を将棋界にもたらしました。最後はそれについて紹介します。

将棋AIが変えた将棋

紹介したように将棋のAIは現在、人間の遥か上の実力を持っています。
それらのAIを活用することで将棋界には多くの新しい将棋の可能性が生まれました。
これは多くの新しい戦法や指し方がでてきたという目に見えた形で確認することができます。
例をだすと以前はアマチュアの戦法でありプロレベルでは通用しないと思われていた数々の戦法がAIが高く評価したため、有力なものとして注目を集めました。
他にも以前は人が指さなかった戦法が現在のプロの主力の戦法になったりしています。

また、もう一つ大きな変化が生まれています。
それは若手棋士の台頭です。

将棋というのは答えがわかっていない道を進むゲームです。
そこで、以前はもっとも道に詳しい人、つまり羽生さんをはじめ将棋界の頂点にいる人の手を参考に多くの人が将棋を勉強していました。
また、将棋界の頂点にいる人たちに勝つには彼らの上をいく手を指すことが必要でした。
これらの手は研究やひらめきから生まれることが多かったのですが、その研究はトップ棋士を超えるものであるのかわかりませんでした。
何時間もかけて考え抜いた答えがトップ棋士の手以下だったということは十分に考えられたのです。
その結果、羽生さんと羽生世代という強豪棋士たちの時代が長く続きました。
以前の若手棋士はこの壁を超えることが難しかったのです。

しかし、AIが人間をはるかに超える力をもったことからこの状況が変わりました。
AIをサポートに使えば人間のトップを超える研究が可能になったのです。
その結果、AIを使いこなし、研究熱心な若手棋士の活躍が目立つようになってきました。

もちろん、AIはみんなが使えます。
今後はAIをどれだけうまく使っているか。
あるいは、どれだけ熱心に研究したかといった点が重要になってくるでしょう。

このようなAIの進歩がどのように人間を変えたのか?
あるいは今後将棋界だけでなく、AIはどのように、社会を変えていくのか?
このような視点を将棋を眺めてみると面白いかもしれません。


おまけ 藤井聡太、AI超えとは?
おまけでしばしばAIを超えた手を指したなどと話題になるケースについて、簡単に説明します。
将棋のAIは対局中に次の一手はどの手がいいのかという場面でいくつかの候補手を示します。
基本的にこの候補にない手を指した後、AIがその手の方を高く評価した場合にAI超えなどと言われます。
このAI超えは中盤の候補手がいくつもあるような難解な場合と終盤の詰みの場面で多く発生します。
実はこのAI超えといわれるような状況は藤井さんに限らずちょくちょく発生しています。
では、なぜ、藤井さんだけがAI超えと言われるのでしょうか?
それは藤井さんの対局が注目を集め、AIを使って検討している人が多いので目撃されているからという事情があります。
つまり、1手だけAIの手を超えるというようなことは他の棋士やアマの対局でもたまに起こっています。
もちろん、頻繁に起こることではありませんが、多くの将棋プレイヤーにもこれは起こっていることなのです。
私自身も自分の将棋を検討にかけた際、AI(ソフト)が示さない手を指していて、悪い手には見えないので、どこが悪かったんだろう?と思って調べてみると
評価が変わり自分が指した手の方がAIの評価が高くなったことがあります。
藤井さんがこのような手を指すと記事として注目を集めるので話題にされているといっていいでしょう。
悪く言えば、記事のアクセス稼ぎとか動画の視聴数を伸ばしたいとかそういう大人の事情で大きく取り上げられているといえます。
次に終盤の詰みや必死という受けなしの局面などで現れるケースです。
終盤の詰みの場面ですが多くの人が使っている将棋のAIつまりソフトは詰みを優先的に読むのではなく、数手先に将棋が勝ちやすいかどうかで判断しています。
そのため、駒を捨てて詰ますといったような変化は読みにくく、詰みを読めない場合があります。
これが終盤のAI超えと言われるケースです。もちろん詰みを優先的に読む詰めAIを使えば確実に詰みを発見できます。
つまり、AI超えとはAIより強いというわけではなく、1手だけAIの候補手よりよい手を指したということで、これは他の人でも稀に起こっているのです。