将棋チャンキング

将棋上達プログラム実践編では将棋上達に関して全体的像を示してきました。

今回は少し掘り下げていこうと思います。今回の軸になるのはチャンキングです。

チャンキングとは?

チャンキングとはいわゆる意味のかたまりのことです。このかたまりが上達に重要な意味を持ちます。

以前、チェスの研究で紹介したデ・フロートの研究は上達の中心的考え方が見て取れました。

しかし、デ・フロートの研究で扱うべき部分が実は他にもあります。これが今回のチャンキングです。

以前紹介したデ・フロートの研究ではその場の読みではなく、記憶領域から勝ちへ近づく感覚を引き出していると紹介しました。この過程で明らかになった記憶領域部分をより、高度に使うのがチャンキングです。

ところで、みなさんはマジカルナンバー7というのを聞いたことがあるかもしれません。これはアメリカの心理学者ジョージ・ミラーが発見したもので人間は短期的な記憶では7個前後しか記憶できないというものです。

サイトログイン情報などのパスワードなども意味のない数字だと10個以上覚えるのは大変なので理解しやすいかもしれません。

しかし、これはある方法を使うことでさらなる拡大が可能になるものです。それこそがチャンキングです。

さて、ではちょっと試してみましょう。

この先手陣の駒の配置を覚えてください。

次にこの先手陣の駒の配置を覚えてください

 

どちらが簡単だったでしょうか?将棋ファンなら間違いなく後のほうのはずです。

駒の数と4段目までという位置は同じなので覚える条件はほぼ同じです。しかし、2つ目は①高美濃囲い、②四間飛車のよくある駒配置、③両方の香が上がっている④プラスちょっとしたことくらいで覚えるのは7前後です。一方、最初の駒配置は駒の種類と場所で覚えることは50以上はあるでしょう。これは一つの意味のあるかたまりにすることで覚える量を減らし、脳の処理速度を高速化しているのです。

また、将棋の場合、このような配置だけではなく、対局の進行を手の組み合わせなども意味のある塊として認識することができます。

次の一手を考えてみてください。

これはよくある5手詰です。正解手順は▲7一角 △9二玉 ▲9三歩 △同 桂 ▲8二金の5手です。この問題を解くにあたって、初心者の人はまず一つ一つ駒の動きを確認して、なにで王手できるのか?といったところから考えなければなりません。そして、そこから詰む組み合わせを考えていきます。具体的には

① 王手ができるのは▲7一角と▲9二金、▲9三金 ▲9三角の四つがある

② 四つのうち▲9二金、▲9三金は同香で取られて次に▲7一角で△9一玉で王手がこれ以上できない

③ ▲9三角は同玉とされると次に王手ができないので間違い

④ そこで最初は▲7一角

といったような具合で考えます。そして初手▲7一角のあともたくさん組み合わせを考える必要があります。

一方、中級レベル以上の人からすれば、これはあまりにも有名な詰み手筋なので、初手▲7一角は一目でその後の5手の読みもひと塊になっているので考える組み合わせはたった1つです。

初心者のようにたくさん考えるのと中級者のように1つ読むのではその差はとても大きいです。たくさん考えれば当然ミスも増えますし、頭がパンクしていきます。こうして、強い人ほど正確に勝ちに近づいていくのです。これがチャンキングです。

この意味のあるかたまりであるチャンキングを増やしていくことが上達の大きな近道になります。

チャンキングが増えると当然、処理速度が上がります。局面理解や読みの正確性も向上していきます。

このように将棋の上達の一つの近道はこのチャンキングにあります。

ではどのようにこのチャンキングを鍛えていくのがよいのでしょうか?

次回はそれについて考えていきたいと思います。

次回 チャンキングを鍛えよう(更新未定)