チェスの研究ではチェスのトッププレイヤーとそうでない人の差はどこにでるのか?という点に着目し研究が行われました。西洋の映画や物語では知能の高い人物の特徴としてチェスをたしなんでいる点が多々見受けれます。このようなことから実感できる通り、チェスは西洋では知の象徴ととらえられていたため、このような研究が行われたのです。
では将棋はどうかというと、実は将棋に関しても次の一手をどのように棋士が選んでいるかの研究が将棋思考プロジェクト(日本将棋連盟、富士通、理化学研究所の三組織からなる)によって行われました。
その結果は非常に興味深いもので下記の文献に詳細がでています。
「次の一手」はどう決まるか 棋士の直観と脳科学 勁草書房
さて、この研究の結果、明らかになったことはチェスの研究とほぼ同様のものでした。
つまり、棋士とそうでない人の差は読みの量ではなく、直観という結論でした。
ではこの直観はどのようなプロセスで導き出されているのでしょうか?
これに関して重要なのは局面の理解です。この局面の理解については脳の左前頭部で全体像のパターン認識による全体像把握と脳の左側頭部で駒の価値による分析がほぼ同時に行われ、その時間は約、0.2秒という結果でした。続いて約、0.7秒でこれらの情報をもとに脳の頭頂部で局面の理解が行われているようです。
この脳活動で明らかになったことはこの脳活動は棋士に特徴的であり、その時間もそうでない人よりも短時間に処理されていたということでした。
つまり、直観を働かせるために必要なことはパターン認識とそのパターンによる分析を総合したものといえそうです。これらはやはり、チェスの研究にあったものと同様、経験や知識による蓄積部分に依るところが大きいと考えられます。