NHK杯でのAIのミス?

2021年5月30日放送のNHK将棋トーナメント 先手 飯島 栄治 八段 対 後手 大橋 貴洸 六段戦で不思議な出来事があったので紹介します。

この将棋は相掛かりの将棋で終盤はAIによる形勢判断が入れ替わるめまぐるしい将棋になりました。
この不思議な出来事とはAIによる判断でミスがでたことです。出来事が起こったのは終盤でAIによる評価二転三転した終盤のこの局面です。
この局面は後手玉に詰みが生じて、先手勝ちの局面です。NHKのAIも先手勝ち99%を示していました。

実際にソフトで検討すると詰みがあります。つまりこの局面では先手に勝ちがある局面です。(詰みはソフトが読んでいる他にも本譜のようにいろいろあります)
ここから▲7四歩 △6三玉▲6一龍 △6二香 ▲7三歩成 △同 玉 と進みます。
しかし、この局面になったときにNHKのAIの評価が急転し、後手勝ち99%の表記になりました。

もちろん、NHKのAIや表記がおかしいというだけではありません。私のPCを使った現時点で最強格のソフトでも同様です。先手が勝ちの局面なのにも関わらず後手勝勢がでています。
ここから▲7四歩 △6三玉 ▲5二銀不成△5三玉 ▲6五桂打 △同 歩▲同 桂で後手投了。先手の飯島八段の勝ちとなりました。
これは視聴者の方は後手の大橋六段が間違えて勝ちを逃したと思うかもしれませんが、実際は違います。

AIによるバグというかエラーが起きた不思議な出来事です。
これは将棋AIが無駄な手を読まずに切っていくため、起こったのかもしれません。

飯島八段は勝ちの局面でしたが、時間がない終盤で歩を成り捨てて、▲7三歩成 △同 玉 と進んで時間稼ぎをしました。

この結果、先手は歩が一枚少なくなりましたが、後手玉の詰みには関係のないほぼ同じ局面です。これがAIにミスをさせた要因の可能性があります。

AIは一度勝ちまで読んだ順なので読みから外したのかもしれません。

実際、この局面だけを編集して作って同じソフトに読ませるとしっかりと先手勝ちを示します。つまりソフトに読む力がないわけではないのです。
また、一度7四歩打をソフトに教えると読んでくれるようになります。

他の最新ソフトでも試してみましたが同様でした。 

ちなみに、GPSfishという今のトップソフトに比べるとかなり力の落ちるソフトではしっかりと勝ちを読み切りました。
人間を遥かに超えるAIといえどもまだ穴があるといった不思議な出来事でした。
ここからは余談ですが、この2回目の7四歩打からの詰みは技巧ではいろいろ試してみると読めたり読めなかったりします。
他には最新ではない探索部を使っている名人コブラでも勝ちを読みきったので探索部が関係しているのかもしれないです。