異質研究 横歩取り青野流対策

異質な青野流対策

(2020年冬 少し更新 最新ソフトによる確認 追記による変化をネット将棋の実戦でありそうなものに変更)

横歩取りの青野流という戦法をご存じでしょうか?

青野流は近年大流行を見せている横歩取りの先手の戦法で、以前よりときどき指されていましたが、主流とはなっていなかった指し方です。

しかし、最近、その優秀性が注目され、横歩取りのメイン戦法の一つとなってきました。

その結果、プロの将棋でも登場する機会が増えてきています。また、その影響もあって、ネット将棋でも遭遇することが激増している戦法となっています。

青野流の特徴とは?

一般的に横歩取りという戦法は先手が早々に歩を得して、その代償として後手は駒組を進め、歩を損した代わりに、先に攻撃態勢を整えるというのが主張になっています。

しかし、青野流は超攻撃的な戦法で、先手でなおかつ先行しやすく、場合によってはあっという間に後手が苦しくなる変化が随所に潜んでいる奇襲的な要素も持つ恐ろしい戦法です。

また、奇襲的な部分が随所にあるとはいえ、先手が悪くなるわけではなく有力な変化も多い先手からすると理想的な戦法ともいえます。

当サイトは将棋の上達法の研究がメインですが、その過程で必要になる将棋ソフトの力を借りる実戦という意味で個人的な青野流対策を紹介します。プロよりも強いとされる超強豪のソフトをいくつか使って検証しているので大きな穴はないと思います。ただ、やや癖のある対策なので、万人受けする対策とはいえませんが、もし感性に合うなら試してみるのも面白いと思います。私自身ネット将棋で同じ局面を何度も経験しているので勝率アップに貢献すると思います。この記事を書いてからしばらくして、藤森式青野流 絶対退かない横歩取りという青野流の戦術書が出版されました。この本に僅かですがこの対策に触れている部分があります。そのせいものあってか、この対策が使えない場面が以前より増えてきました。といっても使える場面はかなり多いので、興味のある方は試してみてください。

ちなみにほぼ同じ内容を動画で紹介した続編異質研究 横歩取り青野流対策2もあるので興味のある人はそちらも見てもらえると理解が深まると思います。スマートフォンの場合はそちらの方が見やすいかもしれません。

初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲5八玉

ここまでが基本的な青野流の進行で次の後手の手にはいくつも有力策が考えられます。

ここで面白いのが△6二玉という手で、これが異質対策にあたります。

以下▲3六歩 が圧倒的に多く、さらに見慣れない△8二歩とするのが後手の研究です。

この手に対して、青野流の従来の狙い通り▲3七桂とするのが多く、私が試した範囲ではこの手が来ることが非常に多かった記憶があります。また、いくつかのソフトもこれを有力な手としているので不自然な手ではないと思います。

続けて
△8八飛成 ▲同 銀 △5五角打
といきなり飛車を切っていく手があり、これは他の2015年あたりに別の形で登場し、一時流行した攻め方と似ています。歩を打ったのはこの攻めをするためです。

この局面では8八飛車成からの二枚替えと3七の桂を取る二つの狙いがあるので先手の手はいくつか限定されます。

もっとも多かったのが4五桂でとられそうな桂馬を活用する有力な先手の一手です。

他には二枚替えを避けるための3三飛車成も有力です。ここで後手は同桂とするので▲3八銀ととられそうな桂馬を守ることができます。

では続けて最も多い4五桂への対策を紹介します。

この手には8八角成と切って二枚替えを狙っていきます。同金なら同角成として後手優勢になります。

(先手から強襲があるのでその変化を最後につけておきます。)

そこで8八角成に対しては3三桂成か3三飛成となるのが自然です。対して同馬ととられそうな馬を引きつけましょう。

▲3三飛成 △同 馬 ▲同桂成 △同 桂でやや手の広い局面となりますが、後手が良い局面です。

一例としては次に後手から8六桂と打つ手があるので、2一飛打などははっきり後手優勢です。しかしながら、2一飛打のネット将棋での遭遇率は有段者でもかなり多く、以下、▲8六桂に△7九金、▲7八銀打△同金▲同桂成で4八玉には8八飛とするのがわかりやすく大優勢です。この筋があるので、これを防ぐには8五飛車などがありますが2七桂を見てこれも後手が良いです。

では次は5五角と打った手に対して飛車を切ってきた場合を考えてみます。

5五角打に対して飛車を切ってくる変化

▲3三飛成 △同 桂 ▲3八銀 △2五桂 ▲同 桂 △1九角成
▲2四桂 △3七歩

これには当然同桂ですが、先手も3八銀として桂馬を守ります。そこで面白いのが2五桂のただ捨てで1九角成を狙っています。この手には次に3七歩の狙いがわかりやすいです。

 

補足ですが先手が▲3三飛成 △同 桂 と飛車を切ってきた後に4六角と合わせる手もまれに遭遇します。

この場合は同角と切って、同歩に2九飛打と先着して後手が良いです。以下▲3八銀、1九飛成、▲2一飛打となりますが、2二銀から飛車を捕獲を狙います。▲4一飛成には1四角、▲2三歩には3一金で二枚替えながら飛車を取ってしまえばはっきり後手優勢になっています。

別の変化追加

さらに△1九角成となったときに次の3七歩を防ぐために4八金とする手もたまに遭遇します。これには攻めが難しそうですが、1八飛とつなげていくのが正解です。3七歩が再びの狙いになります。

1九角成と香車を取った局面では2四桂が考えられますが、3七歩と手抜いて攻め合います。▲3二桂成 △3八歩成 ▲同金でここで重要なのが2九馬と手を戻さずに先にいくことで、手を戻していると4二飛打から先手がよくなってしまいます。2九馬に対して3九金打なら同馬として金を入手して、3二銀と戻します。続いて4二飛の王手には5二香と受けて3二飛成、2九飛で後手ペースの戦いです。

少し戻って2九馬に4八金と逃げたら3九銀打で後手有利の戦いです。

いずれもソフトの数字では後手がよくなる変化が多く、最善で来られても不満はない展開です。

しかし、それはソフトの話で人間同士の対局では別の難しさが存在するのでいいかどうかは各人の判断によると思います。また、紹介した変化以外にもいくつもの手が考えられるので相変わらず難しさは付きまとう部分はあります。

今、調べた変化は比較的一直線なので私自身同じ局面を何度も経験しています。もし、青野流にやられっぱなしで困っているのであれば、この異質な対策として試してみるのも面白いでしょう。

追記

5五角と打った局面で非常に遭遇率の高い4五桂と3三飛成を見てきました。この二つが圧倒的に多いのですが、2五飛打という手もしばしば遭遇します。

これについて少し触れるとこれには8八角成、同金、同角成と二枚替えをします。最初の角成に対して2一飛成なら馬で金を取って優勢です。

次に飛車を切って攻めたいところですが、飛車が手に入ると先手玉が詰んでしまうので、この強襲が成立しないのです。

さて、少し上の画像の局面に戻して2五飛打に△8八角成 ▲同 金 △同角成 ▲2一飛成とする変化をみてみましょう。

この変化は一見、龍による王手がちらつくので難しそうに見えるので初見だと悩む場合が多いでしょう。

この場合は△9九馬▲3二飛成 △同 銀 ▲同 龍 △5二香という変化が想定されます。ここで攻めが止まっているので8八飛打から王手をして合駒を請求します。

そこで△8九飛成で桂馬を補充しておくと4六桂からの寄せが見えて後手が大優勢です。

この変化を初手から書いておくので気になる方はコピー&ペーストで棋譜ソフトで再生ください。

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲5八玉 △6二玉
▲3六歩 △8二歩 ▲3七桂 △8八飛成 ▲同 銀 △5五角打
▲2五飛 △8八角成 ▲同 金 △同角成 ▲2一飛成 △9九馬
▲3二飛成 △同 銀 ▲同 龍 △5二香 ▲4一銀 △8八飛
▲6八桂 △8九飛成

 

さて、最後にこれまでの追記を除いた変化を示しておきます。

色のついた部分をコピーしてkifu for win などのコンピューターの棋譜再生ソフトに読ませれば見ることができるので見にくい人はぜひ利用してください。

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲5八玉 △6二玉
▲3六歩 △8二歩 ▲3七桂 △8八飛成 ▲同 銀 △5五角打
▲4五桂 △8八角成 ▲3三飛成 △同 馬 ▲同桂成 △同 桂
*86桂の狙いが厳しい

変化:27手
▲同 金 △同角成 ▲4一飛 △5二銀 ▲3一飛成 △同 金
▲同飛成 △8九馬
*8八飛車を見て後手優勢

変化:29手
▲7七角 △8九馬 ▲1一角成 △4四金
*この受けで後手優勢

変化:25手
▲3三飛成 △同 桂 ▲3八銀 △2五桂 ▲同 桂 △1九角成
▲2四桂 △3七歩 ▲3二桂成 △3八歩成 ▲同 金 △2九馬
▲3九金打 △同 馬 ▲同 金 △3二銀
*手が広いが飛車打には受けがきくし、3七飛の狙いなどもあり後手優勢

検討に使用したソフトは2020年で最強レベルを誇る電竜戦の決勝リーグ進出ソフトを利用してます。

コンピュータ将棋関連では便利なツールである以下のwhale watcher紹介記事もよければご覧ください。

オススメ、便利で可愛い将棋ソフト Whale Watcher紹介